遡ること2022年7月。
実家の庭で長く生きてきたイチョウの木を引き取ってもらえないかー。
そんなご相談を、TAKUMI館にいただきました。
詳細を伺うと、イチョウはご実家の畑の一隅で40年以上生きてきたが、間もなく業者による伐採が決まっているとのこと。
幹周りが1.5〜2メートル、樹高が12メートルと立派なこのイチョウを、材料として引き取ってもらえたら、というご相談でした。
TAKUMI館店長が本ブログの思い出もくもく企画を紹介し、まずは工場へのさまざまな確認を始めました。
現地はラ・ルースの工場がある小田原から40キロ以上離れていること、お客さまによる工場への持ち込みは不可のため、引き取りに行く必要があること。
イチョウは雌雄異株の性質を持ち、雄株であれば引き取り可であることや伐採時の寸法、引き取る丸太の形状に搬出路など、さまざまな問題をクリアし、引き取りと訪問日が決まりました。
天候の心配をはねのけ、予定通りの日時に伐採が行われることになり、社長が製材屋さんと一緒に現地に向かいました。
着いみてるとイチョウのそばにクスもあり、一緒に引き取ることになりました。
伐採の様子です。
こうして、製材ののちにラ・ルースの工場にイチョウとクスを迎え、乾燥に入りました。
今夏、伐採から半年以上を経て、イチョウのまな板とクスのスツールをお納めしました。
まな板はあらかじめプレゼントさせていただくことをお伝えしており、スツールは当初のご希望だったイチョウに代わりクス製を気に入っていただき、ご購入にいたりました。
美しい木目が際立つ、柔らかな光を帯びたようなまな板は、サイズ違いで計10枚。
ご自身でお使いになるだけでなく、どなたかへの贈り物としても活用いただけたら、という想いです。
残ったクスで、シダーブロック「楠コロン」を作り、こちらもプレゼントさせていただきました。
防虫やアロマ効果に優れたクスは、経年により色の変化も楽しめる樹種。
可愛らしいデザインをレーザーで施し、TAKUMI館でも販売することになりました。
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お客さまからは、スツールの可愛らしさときれいな仕上がりのまな板に喜びの声をいただけました。
イチョウのまな板はTAKUMI館で販売を始めたところ、たまたま来店された方に「ずっと欲しかったものにここで出会えるなんて!」と購入いただいたり、初めての木製まな板として購入したスタッフも、包丁の歯のあたりの良さに感動するなど、すでにさまざまな人の手元へ旅立ちました。
実際に使ってみると、一流の料理人が好むというのも納得の使い心地です!
伐採後に処分という方法を選ばず、なんとかイチョウとクスを生かす道を考えてご相談くださったお客さまの気持ちを、
とてもありがたく思います。
すべての木製品に、生まれも育ちもさまざまな、木一本いっぽんの物語があります。
木製品を手に取って、その木の〝これまで〟に思いを馳せてみていただくと、ちょっと楽しいかもしれません。