思い出もくもく企画:ご開帳の経木を製作

2023年6月3日。

安産と子育ての観音様として知られる「千津島観音堂」(南足柄市千津島6)で、
17年に1度の中開帳、33年に1度の大開帳が行われました。

今回は初の試みで、明治期の本堂再建後一般来場者による本尊拝観が行われました。
祭典委員の方たちの尽力により、いろいろな新しい挑戦をされたお話です。

●『回向柱(えこうばしら)』とは、
御開帳の際、本堂前に建立する柱です。

●『経木(きょうぎ)』とは、
スギやヒノキ、マツなどの木材を、紙のように薄く削ったもの。

今回のご依頼は、
境内の過去のご開帳で使われた回向柱から、経木を作ります。


回向柱の側面を見てみると、木目を見てわかる通り、
木の中心部を使用しています。

芯材の部分、赤味の多い部材を使用していることがよくわかります。
材は、腐食に強い部分を使用しています。
標柱にする場合は、芯材の部分を使われることが多いと職人さんから教えてもらいました。

■経木を作る

回向柱を製材して、紙に加工しやすい形状にしていきます。

経木を作るべく、天然木を薄くスライスした板の状態にする突板(つきいた)を作ります。


突板を製造するのが得意な会社さんにお願いして、木材をスライスしてもらいます。

■経木の活用

出来上がった突板は、『3PLY』となっています。
材の構造である【単板・和紙・単板の3層】を表す言葉です。

突板だけだと、乾燥や、木材の割れに弱いため、弱い構造を補うように、
和紙の材が間に入っています。
3層構造の技術で、紙のようなしなやかさと、木の材質を損なわない仕上がりになります。

地元の印刷会社さんにもちこみ
文字を印刷してもらい、紙をサイズに合わせて裁断してもらいます。

回向柱から、経木を作り、御朱印を押して、参拝者に授与されました。

■祭典委員の方たちの想い

『住民の高齢化や現象も進むなか、若い世代に関心をもってもらうことが重要』
これまでは開帳時でも本尊を目にすることができたのは、一部の来賓や僧侶、自治会役員ら数名に限られており
明治期の観音堂再建以後で見たのは延べで30〜40人ほどだったそうです。(※ 2より引用)

福沢諭吉にゆかりのある土地でもあるため、参拝に来られた方は遠方からも訪れたそうです。
1000人ほどの参拝される方が見えたことで、地域の関心などもたくさん寄せられました。

祭典委員の方たちが、
次世代へつなげる想いをもって、地域の住民の方や、一般の方でも参拝できる機会をもうけたこと。
回向柱を経木にして、御朱印帳として活用する初の試みしたこと。
様々な挑戦が、次につながるようになればと思います。

歴史に残るご開帳となりました。


参考・引用資料

1.他にはない神奈川のニュースを!神奈川新聞 カナロコ
https://www.kanaloco.jp/news/life/article-993803.html(2023年7月3日 閲覧)

2.タウンニュース
〈南足柄市・大井町・松田町・山北町・開成町〉
千津島観音堂 33年ぶりに大開帳 本尊の一般拝観は初めて
https://news.goo.ne.jp/article/townnews/region/townnews-682386.html(2023年7月3日 閲覧)

3.読売新聞朝刊(5月24日)に掲載されました
https://ameblo.jp/pa115jp/entry-12804333558.html(2023年7月3日 閲覧)

3.回向柱を珠明寺に運び入れました
https://ameblo.jp/pa115jp/entry-12802357472.html(2023年7月3日 閲覧)